馬場西7つの街
店のおやじ 松本一之さん

 早稲田通りを小滝橋方面に7〜8分歩くだろうか。シチズンプラザの真むかえに気になるお店があった。
入り口手前左に民芸調の下駄箱がある。ときどき何足かの靴が脱ぎ捨てたまま、下駄 箱に入れられずに置かれているのを見かけたことがある。和食処などテーブル席とお座敷席があるような場合、当然お座敷席へは靴を脱いで上がる。しかし、最初から靴を脱いでお店に入るとなると、この界隈でも珍しい。そんな好奇心も手伝って、靴を脱いでみることにした。

 「おやじ」という表現がピッタリな店主、松本さん。さっそく、靴を脱いで上がるくだりを伺ってみた。「ちょこっと来てサッと帰るお客さん、いわば回転率の良さはうちには要らない。ゆっくり寛いで、語らいたいと考えたとき、このスタイルしかないと思った。」とのこだわり。
10人も入れば満員になるくらいの小さな店内。店主を囲むようにL字型にカウンター席がある。嬉しいことに掘りごたつ風になっていて、足が伸ばせる。しかも靴を脱いだ足がなるほど心地よい。
 うりは薩摩地鶏と、店主が厳選した旨い地酒だという。しかもお客様の負担にならないようにと低価格の設定になっている。400〜500円台の銘柄が多い。一番高くて800円、しかもこれは大吟醸手取川だった。とりあえずこの大吟醸をたのみ、壁に掛かったメニューに目をやっているうち、
地鶏と、カボチャの煮物2品のお通 しが出てきた。
奥の席には馴染みのお客さんか、一人座って酒を飲み、店主と話に花を咲かせている。地元の人間ではなく、馬場で電車を乗り換えるとき、ときどき寄り道をするとのこと。「うちは電車に乗って通 ってきてくださるお客さんがほとんど」という。いつしか初めての私もその輪に加わり、時が過ぎていった。
何杯目かのグラスを空にしたとき、「これは勘定には入れません」といって、にごり酒を満たした新しいグラスを差し出された。
またこれが旨い!
 

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